西暦2020年度 蛭川担当科目

科目名 学期 曜日 時限 校舎 教室
人類学A 和泉 (オンライン)
人類学B 和泉 (オンライン)
不思議現象の心理学 駿河 (オンライン)
身体と意識 駿河 (オンライン)
問題分析ゼミナールⅠ 駿河 (下記参照)
問題分析ゼミナールⅡ 駿河 (下記参照)

2020年度の特例

新型コロナウイルス感染症の流行がいつごろまで続くのか、予測が難しいが、2020年度の秋学期も春学期と同様、講義科目にかんしては、オンラインで授業を行う。

問題分析ゼミナール(学部三年生のゼミ)は、人数が少ないため、履修者と話し合って柔軟に進めていく予定。

予定の詳細は、このページ上で更新していく予定である。

参考:明治大学2020年度秋学期学年暦

過去の授業情報

→「2019年度蛭川担当科目



CE2020/03/06 JST 作成
CE2020/07/31 JST 最終更新
蛭川立

身体と意識 西暦2020年度

金曜日・2限(10:50〜12:30)Oh-o!Meijiの「ディスカッション」機能を使い、リアルタイム掲示

掲示板ディスカッション授業

春学期には「Oh-o! Meiji」の「ディスカッション」機能を使ってみたところ、ふだんの授業よりもずっと活発な議論ができたので、今後もこの方式で続けてみたい。

大学の大教室の講義というのは、大きな部屋に何百人も座って、教員が一方的に話し続けて、講義が終わった後も(試験のこと以外は)ほぼ誰も質問に来ない、というのがふつうである。

講義をする教員としても、毎週毎週、一方的に喋り続けていると、聞いているほうの学生諸君が、何を聞き、何を考えているのかわからないまま、という状況である。(しかし、期末試験を読むと、かなりよく書けている答案が多くて、後から、もっと対話をしたかった、と思うことが多々。)

受講者が千人のオーダーになると、全員zoomで議論というわけにもいかないのだが、じつは、文字だけのほうが、周囲の視線を気にせずに質問や意見が言えるという感想が多い。

それでも、千人の受講者がいても、活発な議論に乗ってくるのは十人ぐらいで、残りの九百九十人はどうか、というと、他の人が議論しているのを聞いているのが楽しかった、という、意外な感想も散見された。

毎週の授業の進めかた

参加方法は以下のとおり。

  • 事前に講義ノートを読み、教材ページを読んでおくこと。
  • 毎週月曜日の10時50分(のすこし前)に新たな「ディスカッション」を開始する。
    • 出席(参加すること)は必須ではない。
  • 12時30分まで、蛭川がパソコンを打ちながら、チャットのような形で、リアルタイムで教材の説明をしつつ、同時に質疑応答を受け付ける。
    • 12時30分には、蛭川は離席する。リアルタイムでの質疑応答は終わり。
  • ディスカッションは次週の月曜日の夜まで書き込み可能にしておく。
    • リアルタイムで参加しなかった受講生も内容には目を通しておくことをお薦めする。
  • 蛭川は、ディスカッションを「時々」チェックするので、なにかコメントがあれば、随時、回答する。
  • 受講生どうしの会話に使ってもいい。

(以下、毎週同じことの繰り返し)

授業についての質問

授業の内容や進めかたについて、質問があればOh-o Meijiのディスカッションに書き込んでもらえれば、随時、回答したい。

しかし、教材ページのURLをクリックしても指定されたページに飛ばない、パスワード要求画面が出てくる、等々、よくありそうな質問に対する答えは「蛭川担当授業FAQ」に上げておいたので、目を通しておいてほしい。

講義計画

講義は「ライブ」であり、だから必ずしもシラバスのとおりには進まない。この計画表も随時改訂していく。
 

09/25 胡蝶の夢」(全体の概観)
講義ノート
  意識の諸状態
『荘子』
  『宗教的経験の諸相』
10/02 睡眠と覚醒
講義ノート
  睡眠と覚醒のリズム
  睡眠と夢見の系統発生
10/09 特殊な夢
講義ノート
入眠時幻覚と睡眠麻痺
  明晰夢と体外離脱体験
10/16 臨死体験と類似体験
講義ノート
10/23 講義ノート
10/30 講義ノート
11/06 (学園祭休講)
11/13 心物問題の神経科
講義ノート
11/20 心物問題の思想史
講義ノート
11/27 講義ノート
12/04 講義ノート
12/11 講義ノート
12/18 仮想現実と心身問題
講義ノート
12/25 (冬季休業)
01/01 (冬季休業)
01/08 (他授業の補講日)
01/15 講義ノート
01/22 「水槽の脳」(全体のまとめ)
講義ノート
01/29 (教室での期末試験は行いません)
(→期末レポート課題

 
古いページなど一部のコンテンツには、はてなブログ独自の「なぞなぞ」パスワードがかかっているものがある。講義の中でも随時説明するが、詳細については、蛭川研究室ブログ新館のページ hirukawa.hateblo.jp を参照のこと。



CE2020/04/30 JST 作成
CE2021/01/26 JST 最終更新
蛭川立

西暦2021年度 蛭川担当科目

科目名 学期 曜日 時限 校舎 教室
人類学A 和泉 (教室未定)
人類学B 和泉 (教室未定)
不思議現象の心理学 駿河 1021教室
身体と意識 駿河 1021教室
問題分析ゼミナールⅠ 駿河 308A教室
問題分析ゼミナールⅡ 駿河 308A教室
問題解決ゼミナールⅠ 駿河 2121教室
問題解決ゼミナールⅡ 駿河 2121教室

2021年度の特例

問題分析ゼミナール(学部三年生のゼミ)と問題解決ゼミナール(学部四年生のゼミ)は、人数が少ないため、履修者と話し合って柔軟に進めていく予定。

予定の詳細は、このページ上で更新していく予定である。

過去の授業情報

→「2020年度蛭川担当科目



CE2021/03/05 JST 作成
CE2021/03/05 JST 最終更新
蛭川立

【講義ノート】「人類学A」2020/10/26

文理融合の学際領域としてとりあつかってきた人類学ですが、遺伝、生殖という自然人類学的なテーマから、婚姻、親族、社会といった、文化人類学社会人類学的なテーマへと移行していきます。

春学期の人類学Aの授業を受講した皆さんには、2003年に中国で調査中にSARS騒動に巻き込まれてしまったことを何度もお話しましたが、かんじんの調査の内容については、きちんと整理してお話しませんでした。たとえば、「走婚ー雲南モソ人の別居通い婚」などのページがありますが、当時の体験談と研究資料が混ざったままで整理できていません。整理できないところが現地調査のリアリティでもあるのですが。

〈自然〉と〈文化〉

現代社会・近未来社会における人類遺伝学の科学社会学的位置づけについて、「個人向け遺伝子解析」の社会的意味についても並行して論じてきました。この中で、個人の遺伝子検査の先にあるものとして、「DNA婚活」というサービスがはじまっていることについて紹介しました。

「DNA婚活」というものには、どこか違和感を感じます。教材の本文中に書いたことの繰り返しですが、この「ジーンパートナー」は、解析には「科学的な根拠」があるとしています。たとえば、人間は相手の体臭を手がかりにして、自分と遺伝的に似ているが近すぎもしない相手を性的なパートナーとして選択しているという研究があります。それは、近親交配を避けながら遺伝的に進化していこうとする進化生態学の理論によって説明されます。

しかし、脳に備わった生物学的なシステムが進化生物学的に最適化されていたとしても、たとえば、一夫多妻的な婚姻と、多産多死のシステムによって遺伝的な進化が実現されるという意味での合理性であって、それは、一夫一妻的な婚姻、そして子どもたちと共に家庭を築いていくという近代社会の主観的、文化的な幸福とは、かならずしも一致しません。

一人ひとりの人間が平等に生きる権利を持ち、子孫を残す権利がある(子孫を残さない権利もある)というのが、近代社会の基本理念です。そのことによって人間集団の遺伝子プール全体に有害な突然変異が増えていくことや、逆により良い遺伝子を増やして人類を進化させていくという優生学的な思想は、忌避されます。なぜなら、個々人が幸福に生きる権利のほうが、人類全体が何万年もかけて生物として進化していくことよりも、優先されるからです。

人権の尊重と生物学的優生思想の齟齬を解決する前向きな技術としては、遺伝子編集技術の可能性が考えられますが、これもまた忌避されるものです。そこでは逆に「自然であることが良い」という主張が出てきます。「自然食品」や「自然出産」などがイメージとしては流行していますが、よく考えると、自然であるということは、たとえば出産の時に母子ともにリスクを負うことであって、やはり、これは近代社会の理念とは矛盾するところがあります。

「自然だから良い」とは単純にはいえません。これを「自然主義の誤謬」といいます。この難しい議論については、また別の場所で議論できればと思いますが、人間が物質的身体を持った生物として進化してきたことと、社会、とくに近代社会における、社会的、文化的な人間であることの間には、人間観の祖語があります。それは、事実と価値の齟齬でもあり、理科系の学問と文化系の学問の齟齬でもあります。それを、両方の視点から見ていけるのが、分離を架橋する学問としての人類学である、と私は位置づけています。(「人類学」を「文化人類学」と狭く定義し「自然人類学」を含めないほうが、一般的な使われ方です。)

配偶システムから婚姻制度へ

さて西欧から始まった近代社会のしくみの中で育った人間としては、たとえば婚姻(結婚と同じ意味)とは、好きなものどうしが相手を選ぶ一夫一妻婚であり、なんとなくそれがふつうだと考えがちです。いっぽう、ほかの動物というのは、なんとなく、群れを作る動物もいるけれども、一夫一妻なのかどうか等々、あまり考えないことかもしれません。

配偶システム・婚姻制度について、自然人類学的な視点からは、まずは、サル類の一種としての人類の進化史を振り返り(→「人類の進化と大脳化」)、類人猿と現生人類の配偶システムについて種間比較を行い(→「ヒト上科の配偶システム」)ます。同じサル目(霊長類)でも、配偶システムはさまざまです。

文化人類学的視点からは、人間社会における婚姻と出自の規則について概観します(→「単婚と複婚」「出自の規則」)。人間の社会でも、親族構造は民族によって多様であり、民族の数からすれば、一夫多妻婚の社会のほうが多く、一夫一妻婚の社会のほうがずっと少ないのです。また、原始的な社会は母系的で、進んだ社会は父系的だともかぎりませんし、極東の日本や西欧には、もともと強い父系的・父権的なシステムがあったわけではないことも、他文化との比較によって浮き彫りにされます。

(なお次週11月2日は学園祭期間で、リアルタイム授業もお休みにします。11月16日も「休講」になるかもしれませんが、まだはっきりしていません。11月23日は、祝日ですが、授業は実施します。)

来年度問題分析ゼミについて

西暦2021年度向け問題分析ゼミナール紹介動画がアップされています。インドネシアのバリ島との遠隔通信の様子です。



記述の自己評価 ★★★☆☆
CE 2020/10/26 JST 作成
蛭川立

【講義ノート】「身体と意識」2020/10/23

先週の授業の続きですが、この講義ノートは、「臨死体験」とリスト名を書いた後は、先週と同じ内容です。

Oh-o!Meiji経由でお知らせリンクを送ったのですが、今回の授業内容が特殊であることについて、長々とお知らせメッセージを書いたところ、字数が多すぎて配信できなかったようです。しかし、その後でURLだけ送ったものは、うまく転送されたようでして、皆さんもこのページに辿り着けたでしょうか。

大学生が薬草で疑似臨死体験を起こし、うつ病を自己治療した件について

一昨日、以下のような報道がありました。

news.yahoo.co.jp

まずはこの記事を三ページ目まで読んでください。とくに最後の部分です。

事件が起こったのは去年の七月で、警察が綿密に捜査し、本人と売ったほうの青年の二人を逮捕し、それが報道されたのが三月でした。そのころ私は新型コロナウイルス問題で新年度をどうするのかということで頭がいっぱいで、事件のことを考えている余裕がありませんでした。

悲しいことですが、心を病んだ大学生がネットで危険ドラッグを買って飲んで自殺未遂、救急搬送された、というのは、ままあることです。最初に話を聞いたときには、そういう事件なのだろうなと思っていたのですが、よく調べてみると話は逆で、生きる意味を見失って、自分なんてもうこの世から消えてしまったほうがいいのでは、といった観念にとりつかれて、不登校引きこもりになっていた大学生が、アマゾンの薬草をネットで購入、Amazonで買ったということではなくて、南アメリカのペルーやブラジルで使われてきた、アヤワスカという伝統的な薬草です(正確にいえば、同じDMTを含む似たような植物)、それを飲んで計画的かつ安全に臨死体験を起こし、結果的に人生の意味を取り戻したという、どうやらそれが本当だったと知って驚いたのが今年の六月でした。

以来、ずっと気になっていたテーマなのですが、薬草をお湯に入れて飲んだと言うことが、「麻薬」を「製造」して「施用」したとして罪に問われていたこの大学生、まだ未成年で、家庭裁判所で保護されていたため、間接的な情報しか入手できませんでした。

しかし、その大学生が二十歳になり、成人したので、未公開だった情報が公開され、新聞に載りました。「最強のドラッグ!」のような、いかにも有害そうな書き方はやめてほしいと記者さんには連絡をしたのですが、記事の内容自体は中立的で、結論部分に大学生本人の供述が載っています。今もその大学生はすっかり元気になったままなのだそうです。

昨日、一昨日と、この事件のことを調べていて、授業の準備ができませんでした、というわけでもなくて、ちょうど授業で扱っていた臨死体験というテーマが意外なことにリアルタイムで社会的な事件とリンクして、授業の内容もより立体的に深められると思います。

研究は、たんに知的好奇心を満たすだけではなく、日々現実に起こっている社会現象と関連してこそ、研究としての意味があるとも考えています。

アマゾン川のジャングルに住んでいる原住民が精霊と出会うために使っている幻覚植物について(私が和泉の人類学で講義しているようなテーマです)、そしてDMTという物質が臨死体験を引き起こし、またうつ病を治療する薬にもなるという(私がこの駿河台で講義しているようなテーマです)、これは世界的にはよく研究されていることなのですが、日本では人類学、心理学の両面から研究している人が他にいないらしく、新聞記者の人や弁護士さんから相談があったりで、てんやわんやです。

私もいままでのふつうの人生で、犯罪やら裁判やらと関わるのは初めての体験で、どう対応して良いものやら、目を回しています。しかし、いままで、幻覚植物だとか心霊現象だとか、怪しげな研究として理解されにくかった研究が、こんなところで理解され、役に立つのなら、今まで研究してきた甲斐があった、学者冥利に尽きる、と思い、情報の分析に協力しています。

現時点で私が調べたことと推測したことを、下記のサイトに書きました。これがもし本当なら、大学にも行かず、引きこもってネット世界に逃避している学生のほうが、じつはよく勉強していたという、大学教員としても驚くような出来事です。

hirukawa.hateblo.jp

この事件は、たまたま京都にある某大学の学生さんが救急搬送されて発覚しただけで、南米アマゾンの先住民族が使っている薬草について情報を流してきた「薬草協会」、比較的頭のいい理系の男子大学生を中心に、全国的に広がっていたようです。春学期の「不思議現象の心理学」の期末レポートにも、この事件をネットで見た、ということを書いてくれた人がいました。

彼は、そこそこ大きな大学の、ふつうの学生だったらしく、つまり、いまは大学二年生か三年生か、私のような中年よりも、皆さんのほうがずっとリアルに年齢が近い事件なのです。

下にも書いたとおり、以前に私の研究室で臨死体験の研究をしていた岩崎さんという人が、ネット上に論文をアップしています。

岩崎美香 (2011). 『旅として臨死体験ー日本人臨死体験者の調査事例よりー
岩崎美香 (2013). 『臨死体験による一人称の死生観の変容ー日本人の臨死体験事例から
岩崎美香 (2016). 『臨死体験後に至る過程ー臨死体験者と日常への復帰ー

ざっくりひとことでまとめると、臨死体験が死後の世界の体験なのかはさておき、臨死体験をして戻ってきた人は、人生観が前向きに変わる、ということです。

人間、死にかければ人生観が変わるだろう、というわけでもないのです。岩崎さんは、死にかけて「あの世」を見ないで戻ってきた人と、「あの世」を見て帰ってきた人の比較研究をしています。「あの世」を見て帰ってきた人のほうが、早く死んで天国に行きたいとは思わず、この肉体を持って生きることの意味をしっかり確認して「この世」に戻ってくる、という研究結果が出ています。

検察の取り調べでは、事件の大学生は、ネット上の記事や論文もかなり読み込んでいて、どうも、岩崎さんの論文も読んでいた可能性があります。もしそうなら、私が指導して大学院生に書かせた論文がネット上に流布し、それを読んだ大学生が、死ぬリスクをおかさずに疑似臨死体験をして人生の意味を取り戻したと、そういうことになりますから、私にとっても当事者性の高い事件でもあります。

事件を読み解く基礎知識

しかし、これほど不思議な事件を読み解くには、相応の基礎知識が必要です。明後日にも雑誌の取材の人が来るというので、そういう場合に備えて、まずはこのあたりを予習して、知識を身につけておいてください、ということで、こちら【必読】に解説ページを作ってみました。そこから先にさらにリンクがありますが、必要におうじて参照してください。

リンクがあちこちに飛んで、内容が重複していたり、私もだいぶ混乱していますが、現場のリアルな雰囲気はお伝えできているかもしれません。逮捕だとか犯罪だとか裁判だとか、およそそういう世界は初体験ですし、もともと犯罪関係のニュースやミステリー小説などにもとくに関心がなかったものですし、加害者が被害者を殺害したとか、誰かが自殺したとか、そういう痛ましい事件は正直なところあまり好きではありません。たとえフィクションであったとしてもです。

世の中には色々な出来事がありますが、えてして「わかりやすくて」「不幸な」事件のほうが大きく報道され、人々の共感を呼びます。もちろん、そういう事件の原因を究明し、繰り返さないような対策が必要です。しかしいっぽうで「わかりにくくて」「幸福な」事件は、共感の前に理解するのが難しく、報道もあまりされないものです。「わかりやすくて」「幸福な」出来事も大いにけっこうですし、また同時に「わかりにくくて」「幸福な」出来事の謎を解いていくのが学者の仕事です。「わかりにくくて」「不幸な」事件の謎を解いていく名探偵は多いですが「わかりにくくて」「幸福な」事件の謎を解いていくのが、やはり学者の本懐だと、少なくとも私はそれが生きがいで研究をしています。(アマゾンのジャングルに探検に行ったり、オカルト的なものが大好きだというわけではないのです。)

取材や原稿の話をとりまとめつつ、同時並行で、本当に口でしゃべって授業をしているときのように、話し言葉で、まとまりのない話になってしまいましたが、会話とは違って、また上にさかのぼって文章を加筆修正しています。リンクもWorld Wide Web的に、リゾーム的に増殖中です。



(以下は、先週の講義ノートと同じ内容です。)

臨死体験

臨死体験というのは、死に瀕したときに、光の世界に行って、死んだご先祖様に出会い、また戻ってくる、といった体験です。それに先立って、体外離脱体験が起こることが多いのですが、臨死体験を、文字どおり、肉体が死んだときに魂が抜けて、あの世に行く、ととらえると、意識が身体を離れるのは当然のことです。

しかし、それは否定も肯定もできません。研究が進んでいないから、というよりは、それが、一人称的、主観的な体験だからです。そもそも、肉体から霊魂が抜け出したとしても、その霊魂は、どこに行くのでしょう。それは、雲の上や、地下のような、物理的な場所ではありえません。

私たちは、死の淵から生還した人から、臨死体験の体験談を聞くことができますが、それは、生還したからであって、本当に死んでしまった人からは、死んでいくときの体験を聞くことはできません。

誰もが、最後は死んでいくという体験をするでしょうから、そのときには、臨死体験者が語るような体験をするかもしれないし、しないかもしれません。(なお、いままで何万人もの研究が行われてきましたが、臨死体験者のほぼ全員が、天国、極楽のような世界に行ってきたといいます。しかし自殺未遂者だけは、地獄のような体験をしたという人の割合が多いのです。なぜなのかはわかりませんが、あるていど長生きしてから、老衰か、あまり苦しまない病気で逝きたいものですね。)

臨死体験の話をしていると、これは非常に興味深いテーマなので、長くなってしまいます。こんな話を長々としても、一部の特殊な人しか興味がないことかなと思っていたのですが、最近、この授業の履修者が増えてきて、情コミ学部だけでも8割ぐらいの人が受講しているようで、しかも、レポートで、授業で扱ったような体験で、自分で体験したことを分析してください、という課題を出すと、かなりの人数の人が、自分の臨死体験について書いてくれるのに、とても驚いています。一般人口の臨死体験経験者は、50人に一人ぐらいだといわれていますが、二十歳ぐらいの年齢でも、100人に一人ぐらいはいるようです。大学生ぐらいの年齢で、事故や病気など、とても大変な思いをした人が多いのですね。

家族や友人など、身近な人が体験をしている確率は、10分のⅠ以上でしょう。けっして特殊な問題ではないことがわかります。

瀕死状態から生還した人の場合は、約三割が体験するといわれます。体験しても忘れてしまう人がおおいことからすると、ひょっとしたらすべての人が死にゆくときに臨死体験のような体験をするのかもしれません。誰もが一回だけ死というものを体験するわけですから、誰もが少なくとも一回は体験する、そういう意味では普遍的な体験なのかもしれません。

臨死体験については、これはかねてよりブログ上の未完成記事「臨死体験」や、著書『彼岸の時間』の第一章「他界への旅」をはじめ、多数の場所で繰り返し議論してきましたが、逆に、まだ要領よくまとめきれていません。

臨死体験の映像資料

臨死体験についてはすぐれた映像資料が多数あります。とりわけ再現映像は、文字で読んで理解しようとするよりも、ずっと直感的にわかりやすいものです。

1990年代に立花隆によって構成されたNHKスペシャル臨死体験』は日本での先駆的な秀作でした。最近では同じNHKで2014年に放送されたBSプレミアム『超常現象』が、臨死体験をとりあげています[*1]。自作自演の映像作品『死生観の人類学』でも国際臨死体験研究学会の様子などを紹介しましたが、CGによる再現映像などを入れる予算はありませんでした。

海外のドキュメンタリーとしては、イギリスBBCの『驚異の超心理世界』(NHK教育テレビによる邦訳)や、近年ではDiscovery Channelの『Through the Wormhole』におさめられた「Is there life after death?」などがあります。SF映画というフィクションの中で臨死体験の内容を映像化したものとしては、もはや古典となった『Brainstorm』があります。また、やはりNHKで放映された『チベット死者の書』では、チベット仏教の経典に書かれている死と転生の体験がCGによって再現されています。

臨死体験研究の日本語論文

蛭川の研究室の大学院で学んだ岩崎美香さんが、日本語圏では先駆的な研究を続けてきました。いくつかの論文はWEB上で公開されています。

岩崎美香 (2011). 『旅として臨死体験ー日本人臨死体験者の調査事例よりー
岩崎美香 (2013). 『臨死体験による一人称の死生観の変容ー日本人の臨死体験事例から
岩崎美香 (2016). 『臨死体験後に至る過程ー臨死体験者と日常への復帰ー

岩崎さんは、臨死体験そのものよりも、臨死体験から生還した人の人生観、世界観の変化に注目して研究してきました。これは、とてもユニークな分析です。

事故や病気で死にかけてから戻ってくれば、人生観が変わるのは当然です。しかし、死にかけて臨死体験をせずに戻ってきた人が、これからはもっと命を大切にして残された人生を歩もう、と考えるのに対し、臨死体験をして戻ってきた人は、いずれは死ねば天国のような場所に行くのだろうけれども、それから肉体を持って生きている間は、精一杯生きよう、という、独特の人生観を持つようになるのです。

死後の世界があるかないか、それは死んでみなければわからないことですが、いずれにしても、どう生きるかは、これは現実に意味のあるテーマです。



記述の自己評価 ★★★☆☆
(講義の補助のための覚書であり、大ざっぱな口語調です)
CE2019/10/17 JST 作成
CE2020/10/23 JST 最終更新
蛭川立

*1:『超常現象 1集 さまよえる魂の行方』。 www.nhk-ondemand.jpNHKオンデマンドで視聴できる。)

【講義ノート】「人類学B」2020/10/12+19

先週、10月12日は開店休業のようになってしまい、申しわけありませんでした。昨年度までですと、学会で発表したり会議で議論したりと、そちらのほうを優先せざるをえない場合は、休講ということで、講義をお休みにしていたのですが、リアルタイム掲示板なら、ノートPCが手元にあり、電波さえつながれば、同時並行でできるかと思ったのですが、ちょっと無理でした。今年度の授業は試行錯誤ですが、ちょっと読みが甘かったようです。恐縮です。

さて、今週、10月19日の授業ですが、もういちど、同じ内容を繰り返します。それは、先週、議論ができなかったからでもありますが、かなり広大な分野を扱っているので、むしろ2週間かけて議論する必要がある内容だとも考えるからです。また、遺伝子がパーソナリティを規定する、などということを、サラリと言っていますが、分子遺伝学や脳神経科学の基礎知識があって理解できるものですが、生物学を専門としない大学の、1〜2年生のみなさんには、まずその基本から説明する必要があるかなということで、すこし説明を補充しました。

個人向け遺伝子解析

今週のテーマは「個人向け遺伝子解析」です。唾液を検査会社に送ると、DNAの遺伝情報を読み取ってくれるというサービスです。相場は、1〜2万円です。

私が試したものですが、主なサービスとしては

などがあります。

主な目的は、自分がどんな病気に罹りやすいかということを知ることです。一種の健康診断です。

私がやってみたところでは、喉頭がんにかかる確率が、平均より1.2倍高い、と出てきました。ガンになるのも、遺伝的な要因と、環境の両方があります。しかし、たくさんの要因が交絡しているので、遺伝子検査でわかるのは、せいぜい「罹患するリスクが1.2倍高い」というぐらいです。

遺伝的健康診断

ガンになる確率が高いということがわかってどうするのか、なのですが、たとえば、喉頭がんにかかりやすい人は、喫煙を控えましょう、といった生活習慣指導もついてきますから、多少は参考になります。

(本当に命にかかわるような重病が確実に発病しやすい場合は、逆に教えてくれません。)

自分のルーツを探る

また、自分の遺伝子を調べることで、自分の祖先がどこから来たのかを知ることができます。

アフリカで誕生した現生人類が日本列島までやってきたのは、多数のルートだということがわかっています(→「遺伝子からみた日本列島民の系統」)。自分の祖先が、どのルートを辿ってきたのかを知ることができます。

自分の性格を知る

人間の認知機能、簡単にいえば頭の良さやパーソナリティ、簡単にいえば性格には個人差があるが、その要因は、遺伝と環境が、おおよそ半々か、それ以上であり、遺伝率は意外に高いということが知られています「パーソナリティと遺伝子」、「認知機能・パーソナリティの小進化」を参照。

個人向け遺伝子解析でも、あなたの性格は?あなたの音楽的才能は?といった分析をしてくれるサービスもあります。

もっとも、知能や性格に遺伝的な部分が多いとしても、たくさんの遺伝子がかかわっているため、どの遺伝子が脳のどの機能とかかわっているのかは、まだわからないことだらけで、あなたはこういう遺伝子を持っているから、こういう性格です、といった分析結果が出てきたとしても、血液型性格占いと同じぐらいのものだというのが実情です。しかし、将来研究が進めば、もっと詳しいことがわかってくるかもしれません。

(昨年度までの講義では、教室のPCから自分の分析結果のページにログインして結果をお目にかけていたのですが、今年はそれができません。一例として「GeneLife」で、クロニンジャーのTCIの「自己超越性」について「検査」した結果をこちらにアップしておきました。)

以上ですが、詳しいことは「個人向け遺伝子解析」のページに詳細に書きましたので、ごらんください。

来週以降の予定

来週以降の授業は、遺伝、生殖という自然人類学的なテーマから、婚姻、親族、社会といった、文化人類学社会人類学的なテーマへと移行していきます。

春学期の人類学Aの授業を受講した皆さんには、2003年に中国で調査中にSARS騒動に巻き込まれてしまったことを何度もお話しましたが、かんじんの調査の内容については、きちんと整理してお話しませんでした。たとえば、「走婚ー雲南モソ人の別居通い婚」などのページがありますが、当時の体験談と研究資料が混ざったままで整理できていません。整理できないところが現地調査のリアリティでもあるのですが。

来年度問題分析ゼミについて

西暦2021年度向け問題分析ゼミナール紹介動画が公開されました。



記述の自己評価 ★★★☆☆
CE 2020/10/11 JST 作成
CE 2020/10/19 JST 最終更新
蛭川立