【講義ノート】「不思議現象の心理学」2020/06/19

さて本日、6月19日、金曜日の授業ですが、テレパシーの話からつなげていって、共時性シンクロニシティ)というテーマを扱います。

まずは「集合的無意識と共時性ーユングの著作を中心にー」【必須】に目を通してください。(画像が表示されない場合は、お知らせください。これは、はてなブログで起こっている不具合で、個々のページの画像を張り替える作業を進めています。)

フロイトユングという二人の精神科医の説を紹介しています。二人とも、テレパシーのようなものがあると考えてはいましたが、フロイトのほうが合理的で、それは無意識の情報伝達の仕組みだろうと考えました。しかし、ユングのほうがより神秘的で、テレパシーというのは情報が伝わるのではなく、二人の心がシンクロするのであって、それは量子力学という新しい物理学によって説明できるという、突飛なアイディアを展開しました。

授業で「テレパシー」について扱ったのですが、やはり、共時性のことも話題に出てきました。つまり、人から人へと(言語などの物理的な情報を介さずに)情報が伝わったように思える場合も、本当に情報が伝わっているのかもしれないし、情報は伝わってはいなくても、情報が伝わったような気がする場合もありえます。

たとえば、ある人のことをふと考えたときに、ちょうどその人からメールが送られてきた、という体験をすることがあります。この場合、二人の間に、物理的ではない情報交換が行われたと解釈することもできますし、たまたま、偶然だった、と解釈することもできます。しかし、たまたまだったとしても、その出来事には意味があるように感じられますし、そのことをきっかけに、二人の関係はより親密になるかもしれません。こういう、偶然なのだけれども、意味のある偶然のことを「共時性」といいます。これは、じっさいにテレパシーが存在するかどうかとは、別の問題です。

なお、統合失調症など、ある種の精神神経疾患の症状としても、テレパシーのような体験が起こることがありますが、そうした病理的な現象は、また別に考える必要があります。

このことに触れておきたいのは、統合失調症という病気は、そう珍しい病気ではなく、百人に一人ぐらいがかかる病気で、脳が発達し終えて、さらに発達しすぎることによって起こるという説もあり、だいたい二十歳ぐらいで発病する人が多いのです。早期発見、早期治療が有効です。かつては精神の異常だと考えられていましたが、いまでは神経の病気だということが明らかになっており、薬を飲んで治すことができます。ただ、治療せずに放置すると、慢性化し、悪化していきます。

統合失調症の初期の症状で、テレパシーのような体験があります。たとえば「他人の考えていることが自分の頭の中に入ってくる」とか「自分が考えていることが他人に知られてしまう」といった感覚です。これは、どちらかというと、不快な体験です。「言葉がなくても相手の気持ちがわかる」という体験は、どちらかといえば心地よい体験ですが、病的な妄想の場合は、それが被害妄想のような、不快な体験になることで、区別することができます。

心当たりのある人は、精神科医のところに行って相談しましょう。精神科だとか、精神病だとかいうと、なにか怖い感じがしますが、敷居が高いな、と思ったら、ふつうの内科の医者に行ってもいいでしょう。学生相談室に行くのもよいのですが、今は電話での相談しか受けつけていません。

先週、途中までお話ししかけた、PK(サイコキネシス、念力)については、来週以降に扱います。そこから(すこし難しい話になりますが)現代物理学における「物質」と「観測」の問題へと話をつなげていきます。



CE2020/06/18 JST 作成
CE2020/06/19 JST 最終更新
蛭川立