【講義ノート】「不思議現象の心理学」2020/05/08

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「不思議現象の心理学」とは不思議な講義名称だが、もともとは石川幹人先生が新設された授業である。石川先生が大学院の仕事などでご多忙ということもあり、蛭川が担当を受け継いだ。

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授業内容

「不思議現象の心理学」では「心霊現象」や「超常現象」と呼ばれる現象自体を、心理学的に分析すると同時に、そうした現象をめぐる観念や言説についても、心理学的に分析する。


授業もようやくオンライン上で開始という異例のスケジュールになったが、この非常事態に心霊現象というのも唐突かもしれない。だから、まずは時事的な話題からはじめて本題へ進めたい。

ウイルス感染症にかんする考察 ー生物学的次元と心理社会的次元ー」のリンク先をクリックしてもらえれば、詳しく書いてあるのだがーのっけから個人的な体験ではあるがーいまから17年前、2003年4月、中国で調査中に熱を出して倒れてしまった。

ちょうどSARS(いま流行中の「新型コロナウイルス感染症」の一世代前の「旧型コロナウイルス感染症」)が急速に流行を拡大していたときで、自分もこの謎の病気で死ぬのかと、生死を彷徨うような悪夢にうなされる中で「病気は治ります」という声を聴き、翌日には快復した。

臨死[様]体験

この体験の詳細は「2003年4月、SARS流行下の中国で発熱、臨死様体験」に書いた。またインフルエンザで発熱してしたときのことも「発熱による臨死体験」に書いた。

人は、死にかけたときに「あの世」を垣間見ることがある。しばしば「まだこちらに来てはいけない、戻りなさい」などという声を聞いて、意識を取り戻すこともある。これを「臨死体験」という。

まだ若い学生諸君にこんな話をしても、と思いきや、受講生の皆さんにレポートを書いてもらうと、意外に数十人に一人ぐらいの割合で、臨死体験のような経験があるということに驚かされる。原因は、事故であったり、病気であったり、病気とはいっても、瀕死の重病だけでなく、インフルエンザで熱を出したとき、という話も散見する。

臨死体験は、死後の世界を垣間見る体験なのだろうか、物質的な肉体が死んだ後も、意識の働きは霊魂として存続するのだろうか。それとも、臨死体験とは、脳が瀕死状態で見る幻覚なのだろうか。

祈りは病気を治せるか

またーこれも私個人の体験であるがー病気になったとき、夢で神仏のお告げを聞いたら治ったとか、あるいは、シャーマンや霊能者といったひとたちが祈ったり、治療儀礼を行うことがあるが、それで病気が治るのだろうか。

現代の社会にも、病気になったのは祖先の供養不足だという言説は流布しているし、納豆を食べればウイルスに感染しにくくなるとかいう話もあれば、コウモリを食べるとウイルスに感染するという話もある。

いや、コウモリを食べた人たちはウイルスに感染したかったのではなく、珍味が食べたかったのである。中国の一部では、珍獣食が滋養強壮の漢方薬のようなものとして流通しているらしい。

(ただし、臨死体験という体験の分析については、秋学期の同じ曜日の同じ時限に行われる「身体と意識(2020年度)」でより詳しく扱う予定。)

授業内容にかんする記事の一覧

以下に、今回の授業内容と関連するページを列挙しておく。

必ず読むべき記事

読むと参考になる記事


→講義全体の日程「不思議現象の心理学 2020年度



CE2020/05/06 JST 作成
CE2020/05/08 JST 最終更新
蛭川立