【講義ノート】「身体と意識」2019/12/05

古代のインド哲学のメインテーマは輪廻転生であった。これは、古代のギリシア哲学の主流であるソクラテスプラトンでも同様であるが、思想史についてはまた後日、あらためて議論したい(→「インド・ヨーロッパにおける心物問題の思想史」)

古代のギリシア哲学はいったんイスラーム世界に受け継がれた後、ルネサンス期に西欧に再輸入され、そこから近代的な物質科学が発展した。いっぽう、古代のインド哲学はとりわけ仏教思想として一般化されていったが、それは物質科学を発展させるというよりは、より内面的な探求へと向かった。

古代のインドでは輪廻から解脱するための方法論として瞑想(ヨーガ)という身体技法が発展したが(→「ヨーガと瞑想」)それはむしろ20世紀以降、意識から無意識へと研究領域を広げていく心理学に影響を与えた。

なお仏教思想は中国を経て日本へと伝播する過程で現世的な文化と習合し、変容していった。老荘思想の影響を受けた禅仏教はその典型である。哲学や科学よりも文学や芸術を重んじる日本の文化の中では、禅の思想はむしろ建築や茶道などの美学として洗練されてきた(→「密林の茶道ー茶の湯の人類学ー」)。



2019/12/05 JST 作成
2019/12/11 JST 最終更新
蛭川立